つきとがいとう(詩集 「たなごころ」より)
かえりみち
つきもかくれた
なこうとおもった
まっくらやみで
なこうとおもった
するとがいとうがちかづいて
わたしのかおをあかるくてらした
てらされてはなけないから
はやあしでとおりすぎ
もいちどあらためて
なこうとおもった
しかしがいとうは
つぎつぎやってくる
やってきてはてらすので
わたしはすこしもなけやしない
なけないから
なかない
なかないで
あるきつづける
もうすぐつきもでる
豊葦原瑞穂国
(福岡文化連盟藝術舞台2023 出品作品)
吹く風 頬に強く
金の稲穂が輝く
照る陽 額に熱く
萌ゆる稲穂が笑う
ここは豊葦原瑞穂国
舞い狂う娘のくるぶしが色づくとき
鳴る太鼓 いよよ烈しく
豊作を祈る祭りは続く
昏き海が 熱き太陽をのみこむまで
ここは豊葦原瑞穂国
風がびょうと吹けば
鳶がひょうと飛ぶ
見渡す限りの金の稲穂
風にふかれて
あちらで 佳きかな
こちらで 佳きかなと
豊作の歌をうたっている
風が問う ここはいづこや
八百万の声 応えて曰く
ここは日出る国
豊葦原瑞穂国
満月
(福岡市民文芸 佳作)
月の夜に
犬とすれちがった
目があい
近づいて
すれちがい
ふりむいて
ためらいながら またすすんだ
カーンと冷たい
月の夜に
天神 キリンの群れ
(福岡文化連盟 アートビエンナーレ2022 天神展 出品作品)
今天神は
キリンが繁殖している
空高く首を伸ばした
クレーンよ
新しい街をつくる
古い建物を食み
古い思い出を食み
高く 高く 空に向かって首をのばす
黒田さんがみている
大名さんらもみている
いくさでなんにもなくなっても
えんやこら うまれた
岩田屋 大丸 新天町
マツヤレディス 天神コア
無数のキリンは少女のキリン
どんなことでもコロコロわらう
食べる 装う 知る 遊ぶ
オトナのいうことなんかききません
うれしはずかしコロコロわらう
ワタナベ君ってちょっとよくない?
首を伸ばし
両手を掲げ
無数のキリンよ
未来をつかめ